糖度高めな秘密の密会はいかが?
聞いた話をまとめると・・・有澄の御両親は仕事で忙しく、相良さんの祖父母がお世話してくれていたらしい。

有澄の父は婿養子で、"香坂"というのは父方の旧姓。

母の祖父母は花野井グループの会長職に就任し外国暮らし、会社は父に任せているらしい。

花野井グループは主に二手に別れていて、花野井百貨店と花野井不動産が経営資本にあたる。

副社長になるまでは、花野井グループの御曹司だとバレない様に"香坂 有澄"と名乗り、社内でバイトをしていた。

母は独自の会社を設立し、有澄の成長と共に規模が大きくなった。

自身も御両親には頼らない生活をしていた母なので、後ろ指さされない様に、自立した一人前の人間になれる様にと、一般的に近い生活を送らせていたらしい。

現在の住んでいる1LDKのアパートも自分で貯めたお金で契約した。

厳しい生活を送らせていたのは、仕事の出来る一人前の御曹司として育てる為。

全ては、有澄に経営を任せる為の一連の流れだった事を大学時代に知ったと言っていた。

日下部さんの話が出なかったのは、有澄も何も知らないからか、話したくないかのどちらかだろう。

「…以上、昔話は終わりっ。ゆかりの話も聞きたいな」

私のグラスにシャンパンを注ぎながら、優しい目でこっちを見る。

私はシャンパンをひと口、喉に流しこんでから話を始めた。

「私は小さな時から絵を書くのが好きで、ずっとデザインとかの広告関係の仕事したいなって思ってたの。大学に行くより専門学校を選んだのは他の勉強をしたくなかったのもあるけど、一刻でも早く自立して、実家から出たかったのもあるかな。
実はデザイン系の専門学校に行く事も反対されていたから…ね」

お父さんもお母さんも学校の先生(お母さんは今は引退して専業主婦)、お兄ちゃんは税理士を目指し、私も同じ公務員等のレールに乗せられる所だった。

専門学校に行くと決断した時に『美大にしなさい。この際、何の先生だって良いわ』と勝手な事を言われたが、私は先生になる気もなかったので考えを曲げなかった。
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