糖度高めな秘密の密会はいかが?
だいたいにして絵画の勉強もした事がない娘が、美大に進路を変えても合格するはずがない。

それこそ何浪したら合格するのだろう?

最後には両親も諦めて、『女の子なんだから結婚してしまえば仕事は関係なくなる』と昔っぽい事を言っていたが、仕事ばかりで彼氏も連れてこない娘に対して『結婚は?』とせがむ様になった。

「…いろは雑貨のデザイナー募集してたから、ダメ元で受けたら受かったのは前に話したよね?」

「うん。ゆかりの事は社長の評価も高いよ。持ち込みデザインが気に入ったから即採用だったって教えて貰ったよ。きっと…ゆかりを連れて帰ったら喜ぶよ」

就職活動中、受けた会社は全て落ちてしまい、絶望感を味わいながらの最後の試験。

エントリーシートを記入するのも、就職の面談に行く時も緊張した。

記入間違えばかりするし、面談も上手く行かないし、持ち込みデザインも撒き散らしたりしたが、受かったのが不思議。

引き寄せられていたと言っても過言ではないかもしれない。

「さっき聞こうと思って聞けなかったんだけど…ゆかりは学生時代に…彼氏居た?」

おずおずと申し訳なさそうに聞いてくる有澄。

「高校の時と専門学校の時に一人ずつ。就職してからすぐ別れたの」

「そうだよね、居ないはずないよね…ゆかり、可愛いもんね」

「聞いたんだから、有澄のも教えて」

シャンパンの酔いが回って来て、頬が火照る。
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