糖度高めな秘密の密会はいかが?
「いいんじゃない?迷惑かけたって。彼氏だし、上司だし。…この際、開き直って逆手にとってやれば?ゆかりも、その立場を"利用"したらいいよ。

ビジネスは時に騙し合いというか、お世辞も利用も範疇に含まれてるよ」

言っている意味が私には理解出来ないのだが、有澄が策略家だという事は良く分かった。

「っね?」と言って、右手の人差し指で私の左目のきわに溜まっている涙をなぞる。

目が合うと有澄の右手が肩に触れて、お互いに自然と目を閉じ唇を重ねようとした時、ドアをノックする音が聞こえた。

「失礼いた…副社長、今何しようとしてましたか?」

ドアを開けるなり、冷ややかな目線と共に低音ボイスで指摘したのは相良さんだ。

「相良、仕事が早過ぎるんだよっ!」

「仕事が"早い"と言って怒られたのは初めてです…」

慌てて離れて、お互いに違う方向を見た。

私も有澄も頬を赤らめて、まともに相良さんを見れない。

「フリーメールのアドレスを使って、不特定多数に送信した模様ですね。企画開発部、総務部、広告部他、アドレスの一覧表を出せる範囲内です。上層部に送信されなかったのは、ただ単にアドレスを調べる事が出来なかったからでしょう」

「…そう。…で、犯人は誰?」

「社内の人間ではなく、部外者のPCから発信された様ですね。社内のPCからなら足が付くでしょうから、いくら何でも送信しないでしょうし…」

部外者?部外者または社内の人間の自宅のパソコンって事も有り得るのかな?
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