糖度高めな秘密の密会はいかが?
私達はホテルを出て、それぞれの帰路に別れた。

社長も佐藤さんの結婚式に出席して、夕方からは御在宅との事で、着替えをしてから有澄の実家に御挨拶に行く事になっている。

「ゆかり、疲れてない?大丈夫?別に日にちを遅らせてもいいんだよ?」

「疲れてないよ。御両親がお忙しい中、お時間作って下さったんだから、変更はしちゃダメだよ!」

有澄のアパートに着くと休む暇もなく、着替えをする。

御挨拶に行く為に新調したオフホワイトのワンピース、有澄にクリスマスプレゼントで貰ったネックレスに髪型は挙式の時のままなふわふわウェーブ。

「ゆかり、可愛い!実家に行かないでどこかに出かけたい気分…」

「ダメだよ。ほら、行こっ」

有澄が背後から抱きついて来たけど、ゆっくりと振り払って、玄関先まで誘導する。

6月だが、まだ梅雨入りはしていないので、外は蒸し蒸しして暑い。

「有澄の誕生日、もうすぐだね。どこかに行こっか?有澄の好きな所でいいよ」

駅まで手を繋ぎながら歩く。

来月の7月1日は有澄の誕生日だ。

初めて一緒に過ごす誕生日だから、今からとても楽しみにしている。

「俺はゆかりと居られたらどこでもいいよ」

「それはダメなのっ!考えといてね」

「じゃあ、ゆかりが決めといて」

もうっ、自分の事になると適当なんだからっ。

そんな事を話ながらの駅までの道のりは、あっという間。

乗り換えをして渋谷駅で電車から降りた。

段々と近付いて来る有澄の実家に、緊張し過ぎて足取りが重くなる。

「どうしたの?」

緊張感からいつの間にか手を強く握り締めていた私に気付き、問いかける。
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