糖度高めな秘密の密会はいかが?
「き、緊張して来ちゃった…!有澄のお母さんって言っても社長だし、な、何で秋葉さんなのーっ!?って言われないかな?」

「ゆかりは心配性だね」

ドキドキドキドキ・・・。

思えば、会社内で会っても緊張感半端ないのにプライベートで会うってどんな感じなんだろうか?

社長は洋菓子が好きと言ってたので、お土産に用意はしておいたけれど・・・考えてみたら、お父さんには何も用意してなかった。

御両親に挨拶に行く事は初めてなので、勝手が分からないな。

「ゆかり…」

人気のない路地裏で有澄が立ち止まったので私も立ち止まる。

「…緊張ほぐれた?」

「有澄のバカッ!!誰かに見られたら恥ずかしいでしょ!」

"緊張をほぐすおまじない"って不意打ちのキスをされたのだが、公衆の面前でするとは!

エロバカ王子っ。

「ゆかりをからかうと面白いんだもん」

「絶対、絶対っ、仕返しするからね!」

「楽しみに待ってるよ」

辺りは薄暗くなって来て、電灯の明かりがついた。

人気のない静かな住宅地。

有澄が学生時代に歩いた道。

「…小学校から帰る時間になると、いつもこの辺まで相良の祖父が迎えに来てくれるんだ。たまに意地悪して、一本向こうから帰るんだけど…すぐに発見されたんだ。
帰りたくない時は寄り道してから帰るんだけど…そんな時もずっと何時間でも、この場所で待ってた」

「秘書の相良さんと同じで誠実なんだね。相良さんの性格はおじい様譲りかな?」

ふと思い付いた様に話してくれる、有澄の昔話が嬉しい。

どんなに願っても過去に戻る事も、覗く事も出来ない。

有澄が話してくれた事が私にとっては真実そのもので、知らなかった過去が広がる。
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