糖度高めな秘密の密会はいかが?
私は薬指を立てて口元につけて「シーッだって!」と再度注意を促してから、

「分からないけど…酔ってキスしただけだったのかな…」

と言った。

「…へぇ、そうなんだ」

綾美が返事をする前に返事をしたのは、日下部さんだった。

「…席がココしか空いてなかったから仕方なく。どうぞ遠慮なく話を続けて」

私達の席は四人掛けで二席空いていたが、社員食堂は混んでいるけれど、他に座れない訳ではない。

当たり前の様にお膳を置き、割り込みをして来たのは一人ではなく二人だった。

咄嗟の事に恥ずかしくなり、顔の火照りを感じた。

日下部さんに余計な事を聞かれた───・・・・・・

「お疲れ様です。すみません、ご一緒させて下さい」

「あっ、高橋君。お疲れ様です」
「お、疲れ様です…」

偶然にも先程の話に出て来た、高橋さんだった事に驚く。

綾美の切り替えの速さについていけない私は、しどろもどろだった。

高橋さんは総務課に所属していて、日下部さんと私の一年下の後輩にあたる人。

面識はあるけれど、総務課に行った時に少し話をするだけ(主に社交辞令的な内容)の関係。

「実は高橋が杉野と一緒に食べたいって言うから…」

「先輩、余計な事言わないで下さい!」

日下部さんの余計な一言で高橋さんは慌てている様に見えた。

「二人ともB定だから魚ですね。私達はA定だからハンバーグです。デザートにミニプリンついてる!」

綾美は何も気にしないのか、定食の中身の違いを確認していた。
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