糖度高めな秘密の密会はいかが?
「はい、どうぞ」

「ありがとう…って、カフェオレか?甘いし。いつもブラックだろ?」

コーヒーを手渡すと、日下部さんは中身も見ずにひと口飲んだだけで異変に気づいた様だ。

「すみません、押し間違えました」

本当はわざとです。

「まったくお前は…!」とブツブツ愚痴を言った後に、

「こないだの忘年会のホテルから来月初めのブライダルフェアに顔出してくれないかだって。ブライダルのマネージャーが会いたいらしい」

と話を続けた。

「え?何で私?営業さんじゃなくて?」

「営業とか広報部とは別に個人的に話がしたいそうだ」

個人的に?

「俺も行くし、杉野も誘っていいぞ」

「分かりました」

ブライダルフェアかぁ。

当たり前だけど、一度も行った事ないよね。

どんな感じかなぁ?

楽しみかも・・・・・・!

「今日は朝から休みボケで気の抜けた顔してると思ってたけど…今度は口元ニヤけてるぞ」

「楽しみだからブライダルフェア。初めて行くからワクワクする」

「初めて行く相手がアイツじゃなくて俺で残念だったな!」

「あ!そうだった!」

「あからさまだな、お前は…」

日下部さんのデスク近くで話していると、他の社員にも聞こえていたらしく、

「ブライダルフェアかぁ、懐かしい」
「え!?行った事あるんですか、山口さん?」
「当たり前じゃない、今の旦那と結婚する前に行ったのよ。もう、馬鹿にしないで」
「早く結婚したい!」

とか話し声がチラホラ。

今日は仕事初めというのもあって、比較的穏やかな職場の雰囲気。

日下部さんにうるさく言われないで済みそうな一日。
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