糖度高めな秘密の密会はいかが?
私は皆の分の飲み物を買って、外でタバコを吸っていた日下部さんに近寄る。

「タバコ…吸わないんじゃなかった?」

「たまに吸いたくなるから…」

スタンド式の灰皿の横で、コンビニの壁に寄りかかってタバコを吸っている日下部さんは初めて見た姿。

会社の中は基本は禁煙で、隔離された喫煙部屋でしか吸う事が出来ないのだが、休憩中に通りかかっても日下部さんの姿をソコで見た事がない。

「ふぅん、そう。日下部さんさぁ、何で急に車を運転しようと思ったの?ずっと運転してなかったでしょ?」

「普段は電車で済んでたけど…家族が増えたら車も必要だろ?」

「そうだけど…。まるで結婚でもするような口ぶりだね」

「…………」

意味深な事を言っておきながら、突然、無言になるの止めて下さい!

会話が続かないから逃げちゃおうっと。

「高橋さん、もう行きます?」

「そうですね。そろそろ出発しましょうか?」

コンビニから出てきた高橋さんに声をかけて、車に乗り込んだ。

行きと同じ、日下部さんと一緒の後部座席。

多少気まづいけれど、運転されるよりはマシかな?

そう言えば、行きの車の中で"日下部さんの人間らしい部分"って二人が言ってたのを思い出したけれど・・・まさかの・・・。

「そっか、日下部さんの人間らしい事って、運転が下手な事だったんですね!」

「遠慮なく言うんじゃない!」

思い立ったのでつい口に出して言ってしまい、日下部さんに睨まれる。

綾美と高橋さんの笑い声が車内に響く。

たわいもない話をしていたら、いつの間にか夕暮れの時間。

薄暗くなってきた車内、高橋さんの運転ってやっぱり心地よくて眠くなるんだよなぁ・・・。
< 94 / 216 >

この作品をシェア

pagetop