俺がずっと守るから
彼は恐らく、私を知らない。少なくとも顔は。
いや、もしかしたら名前は愚か婚約者の存在すら知らないのかもしれない。
そして彼は、とにかくチャラそうだ。
ニコニコと周りに笑顔を振りまくまではいいが、イギリス仕込みなのか女の子へのスキンシップが少しばかり多い気がする。
それなのに紳士的な雰囲気でそれを感じさせない芸当に、私は思わず感心してしまった。
「李樹ー、彩葉ー、ついでに光里ー。飯食おうぜ」
そんな折、輝が私たちの教室に顔を出し名前を呼んだ。
「ついでって言うなバカ輝」
「名前呼んでやった時点で感謝しろよな」
「なんですってっ!?」
そしてお決まりの喧嘩が始まれば、李樹は輝の腕を捻り上げ強制的に終了させる。
…ん?
そんな様子を見てケラケラ笑っていると、ふと視線を感じた。
「君が、彩葉ちゃん?」
その視線を探す前に、私の視界にさっきまでたくさんの人に囲まれていた人物が写り込む。
「そうですが…」
「やっぱり。会えて嬉しいよ。よろしくね?」
ニコリと笑ってその人物───三芳くんは、私の方へと手を伸ばした。