俺がずっと守るから
家まではまだ少し道のりがある。
つまり、李樹が敬語に戻ることはまだない。
「俺なんかに教えてもらわなくても家にたくさん先生がいるだろ?」
「やだ、李樹がいい」
「そもそも俺より彩葉の方が頭良いし」
「でも物理は李樹の方が上でしょ?」
遠回しに断ろうとする李樹を頑張って説得する。
確かに、家には英才教育で私に勉強を教えてくれる先生がたくさんいるし、小さい頃から知識を叩き込まれたから李樹よりも成績はいい。
けど、物理に関してはてんでダメな私に比べて李樹は完璧だ。
それに何より、私は李樹と一緒にいたい。
「はぁ、分かったよ」
「やった!」
やっとの事で李樹が承諾をすれば、それだけで私のモチベーションは上がる。
この後の苦手なピアノもテーブルマナーも頑張れそうだ。
***
「────ですから、これがこうなるわけです」
全ての習い事が終わったのは21時。
それを乗り越えた私は今、李樹に物理を教えてもらっている。