俺がずっと守るから
「それ、離してくれないかな?」
できるだけ優しく言ったつもりなのに、彼は怪訝な顔をした。
意味が分からないというような、そんな顔。
…なんで分からないかな。
イラついた黒い感情が自分の中を支配する。
今の彩葉ちゃんは、椎名クンとどう接すればいいか分からなくて混乱している。
それなのにいつも通りな君が当たり前のように手なんか繋いだら、それこそ彼女が気の毒じゃないか。
「君ほどの実力なら手なんか繋がなくても守れるだろう?だったらその手、繋がなくても構わないよね?」
昔から、優しい顔と声色を使いながらも人に圧をかけるのは得意だ。
その技を彼にかける。
大体の人は言い返すことはない。例え言い返したとしても、さらに圧をかければ勝てるのが当たり前だった。
それなのに。
「いくら三芳様の頼みであっても、それは無理です」
彼は、彩葉ちゃんの手を更に強く握ってそう言って来たんだ。
それどころか、その手を引いて抱き寄せる。
「彩葉を他の男に触らせるわけにはいかないんでね」
そして、彼はそう言い放った。