俺がずっと守るから
ボディーガードの仕事は、主人を危険から守ること。
他の男に触られないように阻止することじゃない。
…なんだよ、こいつ。
めちゃくちゃ彩葉ちゃんに惚れてるじゃないか。
「他の男って、俺は彼女の婚約者なんだけど?」
「今は俺が彩葉の彼氏だ」
「仮だろ」
「そっちこそまだ正式じゃないだろ」
言い返しても拉致があかない。
言いくるめられないのも、こんなにムキになるのも俺らしくないな。
「ちょ、李樹…っ!離して!」
「ん?あぁ、悪りぃ」
そんな俺らの言い合いの間も椎名クンに肩を抱かれていた彩葉ちゃん。
流石に近距離すぎて我慢がならなかったらしい。
椎名クンから離れた後の彩葉ちゃんの顔はほんのり赤かった。
「ほら!もう早く行こう?」
「待って、彩葉」
その顔を誤魔化すかのように先に進んでいく彩葉ちゃんを椎名クンが追って手を捕まえる。
そんな2人を後ろから眺めていた俺の心の中は、どうにも表現しにくいもどかしさでいっぱいだった。