あの日の約束を、君ともう一度





漏れる嗚咽。






それを自分の意思ではもう止められなかった。






「染谷.....あの時のリストバンド、まだ持ってるか?」






その言葉に、私は一旦依月から離れる。






そして、左の袖をまくった。





「...毎日、着けてた。あの約束を忘れた日なんてなかった。」






左手首にはブルーのリストバンド。






「...ははっ、俺たち、同じだな。」






依月も左手の袖をまくった。






そこにはオレンジのリストバンド。






「なんで...」






依月は私のことが嫌いだったんじゃないの?






なんで着けてるの...?





てっきり、依月はもうリストバンドを捨ててしまったんだと思ってた。






約束も忘れてしまったと思ってた。







もしかして、ずっと約束を覚えてくれていた?







「俺も、約束を忘れたことなんてねぇよ。ずっと忘れられなかった。...2年の時、ずば抜けて上手かった染谷を、忘れられなかった。」






依月はリストバンドを見つめながら、そう言った。






「会場で染谷のことを探したけど見つからなくて。あんなに上手かったのに、メンバーにいないはずないって思ってた。.....何度かリストバンドを捨てようと思った。もう、忘れようって。

────でも、忘れようとすればするほど、どんどん俺の中で染谷の存在が大きくなっていった。...忘れることなんて、出来なかった。」





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