あの日の約束を、君ともう一度
部活も終わり、片付けも一段落したとき、依月に声をかけられた。
「...染谷」
驚いて後ろを振り返る。
「どうしたの...?」
「あーいや...」
依月は右手で首の後ろを触る。
すっと目を私から逸らして、依月は口を開いた。
「.....一緒に帰ろうぜ。」
「え...?.......大丈夫だよ。電車だし。」
「でももう暗いし。家まで送る。」
今は夜の九時。
確かに暗いけど、受験期はこの時間はまだ塾にいたから、全然気にならない。
それなのに、依月と帰りたいと思う自分がいた。
「...じ、じゃあお願いします...。」
そう言った瞬間、後ろから笑い声が聞こえた。
「...そうかそうか。やっぱり二人はそういう関係だったのね...?」
ニヤニヤしながら私たちを見る鈴奈先輩。
正直言って、かなり気持ち悪い。
「そういう関係って...」
全然そんなんじゃない。
鈴奈先輩の言う“そういう関係”って、“カレカノ”とかいうことでしょ?
この前まであんなに嫌われてたのに、そんな付き合うとかありえない。
ありえない、はずなのに────。
「いや、俺たち付き合ってないですよ」
そうキッパリと即答した依月に胸がチクッと痛んだ。
その痛みに私は気付かないふりをして、「そうですよ〜。ただの友達です!」と言って笑った。