あの日の約束を、君ともう一度
2Q【バスケと男の子】
1
「.....バスケしたい」
こぼれたその言葉を拾ってくれたのは、他の誰でもないお母さんだった。
「よく行ってた、あのコートに行ってくればいいんじゃない?」
昔、毎日のように行っていた、屋外のバスケットコート。
電車で三駅先のそこに、私は通っていた。
「...行けば誰かしらバスケしてるかな」
立ち上がった私を、お母さんはソファに座ったまま見上げた。
「行くの?」
「.......うん。行ってきます」
私はそれだけ言って、家を出た。
財布とスマホ、ICカード以外は何も持ってきていない。
あのコートにバスケットボールを持たずに行くのは初めてだ。