あの日の約束を、君ともう一度
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「...さーや!まーた、バスケ見てる〜。もうマネージャーになっちゃえばいいのに〜。」
隣で笑いながらそう言ったのは、幼稚園からずっと一緒にいる、幼なじみ兼親友の河合莉花(カワイリカ)。
「...え、また見てたー?」
「見てた見てた!がっつり!」
眩しいくらいの笑顔で、莉花はそう言った。
「まじかー。...でもマネージャーにはならないよー。見てるだけで充分!」
私は、あははっと笑った。
本当はバスケ部に入りたい。
でも、入れない。
全てがあの日に奪われた。
私のすべてはあの日になくなった。
「そうなの?...さやはバスケがまだ好きなんでしょ?」
そうだよ。当たり前じゃん。
あの頃の私は、バスケが全てで。
それがなくなった今、私に残ったものは何もない。
私の名前は、染谷沙耶佳(ソメタニサヤカ)。
県立の桜丘高校に通う、1年生だ。
この高校には、中学1年生の時から入ろうと思っていた。
バスケが強かったから。
男子はインターハイの出場常連校で、女子はインターハイには出られないものの、県立ではトップだった。
絶対に、バスケで入ると決めていた。
絶対に、桜丘高校でバスケをやるんだと思っていた。
でも私は、バスケをやることを諦めた。
辛くなるから、バスケに関わることもやめた。
今私は帰宅部だ。
これからどこかに入部する予定もない。
一人の時間を増やしたかった。