あの日の約束を、君ともう一度




「...おう」






「なんだよ依月。知ってんのか?」






「まあ...。染谷沙耶佳じゃないのか?」






「そうそう!」






「染谷がなんなんだよ」






染谷のことになると、自然と声が低くなる。





染谷なんて嫌いだ。





けれど、どうしてか嫌ってるはずなのに、染谷の顔が頭から離れない。






バスケをしている時の、キラキラした表情。






俺と話す時の、悲しそうで苦しそうな顔。






河合と話している時の、楽しそうで、どこか辛そうな顔。






そして、この前見た、瞳から大粒の雫がこぼれ落ちる染谷の顔。






─────あいつ、ずっと辛そうな顔してる?






そういえば、あいつが心から笑ってたのっていつだ?






中学の頃のバスケをしている時だけ?






いや、俺が見てないだけかもしれない。






染谷で埋め尽くされる。








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