霊感彼氏。
そんなあたしの意識が、神代君の手にある白い紙に向けられる頃には彼はすっかり回復していた。
白い紙は、彼の言っていたお札とよく似ている。
もしかして……。
「それ、あたしにくれるお札?」
やった!
これであの心霊現象とはひとまずおさらば……
「これは別物」
……なんていう考えは、首を横に振る神代君によって脆くも崩れ去っていった。
あたしはがくりと落胆する。
なんだ、違うのか……。
「でも一応ここに貼っとく」
「え?」
神代君はおもむろにそれをペタペタとうちのドアに貼付け始めた。
しかも外側、通りかかった人に見える方向に。
「ちょ、「これでここは大丈夫」
「ままま待って!それ内側に貼っちゃだめなの?」
心霊現象がなくなるのは嬉しい、すごく。
でもそこに貼ることにはものすごく抵抗がある。
そんなあたしの気持ちを察しかねて、彼は小首を傾げた。
「何で?」
「いや、そこだと人目につくし……」
お札なんて貼ってたら、それこそ変な噂でもたちそうだ。
神代君はしぶしぶと言った感じで、せっかく貼ったそれをはがしてドアの内側にまたペタペタと貼っていた。
でも、そのお札と神代君が持ち歩いてるお札と、何が違うんだろう。
あたしは聞いてみることにした。
と、その前に。
「か……じゃなくて、春也。中入っていいよ?そんなとこに立ってないで」
「いいの?」
「うん」
神代君は律儀におじゃまします、と言って靴を脱いでいた。
礼儀正しいんだなぁ。
あたしは小さく笑みを零した。