霊感彼氏。
リビングに彼を通すと、レイがまるで自分の家の如くゆったりとくつろいでいた。
まだあどけない、黙っていればかわいい顔がこっちを向く。
「おう。遅かったな、二人とも」
「何してんのよ」
「……レイ、いつのまに」
あたしはチビのくせに偉そうな態度に呆れ、神代君は驚いたようにレイを見ていた。
「俺はユーレイだからすぐ入ってこれる」
「そういうの不法侵入っていうのよ!それより、春也」
あたしはレイにしかめっ面を向けたあと、神代君の方に向き直った。
なに?
と首を傾げている彼にいちいちきゅんとしながらも、さっき聞こうとしたことを口にする。
「さっきドアに貼ったのと、神代君の持ち歩いてるお札って何が違うの?」
「………」
うーん、と彼はさらに首を捻った。
今までの様子からして、彼はどうやら説明が苦手らしい。
あたしが何か聞くたびにうんうん唸ってたどたどしく話し出すし。
そういうところも可愛くて好きなんだけど、って何恥ずかしいこと考えてんだ自分。
そんなことを考えていたあたしにかまわず、俺の出番だと言わんばかりに鼻を鳴らしてレイが話し出した。
「貼ったやつと持ち歩いてるやつは、力の強さが違うんだよ」
「力?」
「そう、魔除けの力。貼ったやつは一定の場所には効くけど持ち歩いてもあまり意味はない。で、持ち歩く方はかなり強いから大概の霊は近寄れない」
「そうなんだ……?」
何かよくわかんないけど、それってけっこう貴重なもの?
ほんとにあたし貰えるのかな。
ていうかレイ、子供のくせに説明うますぎて気持ち悪い。
自分も霊のくせに。
訝しむような視線を送っていると、それを知ってか知らずかレイが再び口を開いた。
「ちなみに、その札は作れる人間が限られてる。ハルの持ってるのはハルの兄貴が作ったやつ」
「え、春也お兄さんいるの!?」
あたしは目を丸くし、思わず大きな声でそう聞いてしまった。
すると彼は小さく頷いた。
そうだったんだ、初めて知った。