霊感彼氏。
ていうか、神代君のお兄ちゃんってなんかすごい人……?
そう思っていると付け足すように神代君が言った。
「でも、いま行方不明中」
「ゆ、行方不明!?」
神代君の爆弾発言。
聞き慣れないその単語にあたしは目を丸くした。
行方不明って……、そんなにさらっと言っていいことなの?
「よくあるから、すぐ帰ってくるはず」
「よ、よくあるんだ……?」
あたしは納得できないままに頷いた。
普通、行方不明はもっと大変だと思うよ?
そして、ふと気付いた。
よくよく考えてみれば、あたしって神代君のこと何にも知らないんだな。
家族構成も、どこに住んでいるのかも、霊感があることさえつい最近まで知らなかった。
仮にも彼女なのに。
……なんか、ちょっと悲しくなったかも。
「美加」
俯いていた顔を少しだけ上げると、神代君があの緩い笑顔であたしを見ていた。
それだけで何だか安心する。
不思議な人だ、神代君は。
好きだな、と感じた。
いつも緩やかに光を纏うそのアーモンド型の目も、あひる口も、ゆるくしゃの茶髪も。
その全部が、一つ一つが。
あたしは好きなの。
「つーかハル、もう昼の12時だぜ?」
ほわわーんとしたあたしのピンク色思考は、レイの無神経なタイミングの台詞によって遮られた。
何よ、ませがき!
ていうか、12時だからどうしたの?
「そーだった」
そう言ってソファに座っていた神代君が立ち上がった。
え、もう帰っちゃうの?
そう思って見つめていると、彼はあたしに手を向けて言った。
「美加、デートしよ」