霊感彼氏。
……そう。
考えてもみればこれは初デート。
嬉し恥ずかし初デート。
それなのに。
「何であんたがついてくんのよ!」
あたしは不満を隠そうともせずにそう叫んだ。
そんなあたしに対して、むかつくませガキは飄々としている。
「いいじゃん。俺ひまなんだもん」
「空気読みなさいよ!カップルの初デートについてくる幽霊がどこにいんのよ!」
「ここ」
むっきー!
あたしは声にならない怒りに拳を震わせた。
せっかく神代君から誘ってくれたデートなのに。
記念すべきあたしの生涯初めてのデートなのに。
何が悲しくてこんなのがついてくるんだ。
「美加」
神代君が無表情にあたしの名前を呼んだ。
あたしは彼に顔を向ける。
彼はちらっとレイを見て言った。
「普通の人には見えない」
「………」
ここは道の往来。
真っ昼間でたくさんの人々が行き交う。
その中で、あきらかに隣の神代君じゃない方向を見てひとりで声をあげている(かのように見えた)あたしが浮かないはずもなく。
不審者を見るような視線を送られるあたし。
こ、公衆の面前で何てこと……!
あたしは恥ずかしさに顔を真っ赤にして口をつぐんだ。
けらけらと笑うレイが憎たらしくて、横目でぎろりと睨みつけてやった。
「美加」
もう一度神代君があたしの名前を呼ぶ。
くいっと肩を引き寄せられてあたしの顔はもれなく沸騰寸前。
「気にしなくていい」
レイのこと……?
それがまた神代君のヤキモチだとわかって、あたしは小さく笑みを零した。
かわいいなぁ、もう!