霊感彼氏。
休日の真っ昼間ということもあって、遊園地は人がごった返していた。
ジェットコースターだとか人気のアトラクションの前を通るときには、もう押しつぶされてしまいそうだった。
「す、すごい人……」
あたしが呟くと、神代君が手を差し出してきた。
「ん」
「……え?」
「手」
その意図がくみ取れなかったあたしの手を、神代君がぐいっと掴む。
そして指を絡めてきた。
さささささりげなく恋人つなぎー!
あたしはぼんっと頬を赤らめた。
神代君はいつも手慣れた感じだけど……、緊張とかしないのかな。
ていうかあたし手汗が! べとべとなんだけどっ!!
そのリアルな問題点に、あたしは頭を抱えたくなる衝動を覚えた。
だけど神代君は気にしたそぶりを見せずにどんどん進む。
余裕だなー……。
そう思いながら歩いていると、遊園地のスタッフらしき人が笑顔で近寄ってきた。
「カップルの方ですかー?」
「え、あ、はい!」
あたしは慌てて答える。
いいな、このカップルって響き……!
「今こちらの方お配りさせて頂いてるんで、よかったらお使い下さーい」
そう言ってその人はあたしにチケットらしきものを手渡し、他のカップルの方へ歩いていった。
「なに?」
神代君がチケットを指差す。
あたしがそれを見てみると、どうやらカップル限定のペア無料券らしい。
だけど。
「……これ、お化け屋敷のタダ券」
何でよりによってお化け屋敷!
思わず涙ぐみそうになるあたしをよそに、神代君はふーんと言いながらあたしの手からチケットを奪った。
ま、まさか……。