霊感彼氏。
なんて、自分で言った言葉に恥ずかしくなってあたしは俯く。
流れる沈黙に耐えきれず、えへへ……と無意味と笑い声を漏らした。
次の瞬間。
あたしの肩に神代君の手がかかり、ぐいっと一気に引き寄せられた。
告白された日と同じ、柑橘系の優しい匂いがふわっと鼻膣をくすぐった。
ぎゅっ……と力一杯に強く抱きしめられて、この前のハグとは違うものを感じた。
あたしはゆっくりと彼の背中に両手を回す。
少しでも、神代君の不安をぬぐってあげたい。
その思いが今は恥ずかしさを上回っている。
まるで大きな子どもと母親みたいだ。
そんなことが頭に浮かんだ。
「どうしよう」
あたしの肩に顎を乗っけて、彼が呟いた。
あたしは何が?と尋ねる。
「離れられなくなる」
切ない声でそう言って、あたしの首筋に顔をうずめる神代君。
あたしはというと、さすがに余裕がなくなってきた。
顔が熱い。
動悸が激しい。
だけど、その言葉は嬉しかった。
あたしだって、神代君から離れるなんてもうできないかもしれない。
しばらくして、彼の体があたしから離れた。
だけど肩に置かれた手はそのまま、あたしとの距離を縮めている。
「美加、すき」
そう言って神代君は笑った。
あたしは顔を赤くしながらも小さく笑って頷いた。
視線と視線が絡み合う。
どきどきと、鼓動が鳴りやまない。
彼が好き。
そうしみじみ思った。
ゆっくりと彼の整った顔が近づいてきて、あたしが静かに目を閉じたそのとき。
「公共の場でいちゃつくなよ」