霊感彼氏。
「俺、何したの」
とりあえずかなり急ピッチで学校に行く用意をして、駅まで神代君と一緒に歩いているとき。
彼が怪訝そうな顔をしてそう尋ねてきた。
「いいのっ、もう忘れて!」
「………」
あたしはついさっきの出来事を思い出し、顔を真っ赤にさせながらも首を横に振る。
納得いかないといった顔をする彼を見ないふりした。
悪気はないということはわかる。
そして彼がそれを覚えていないことも。
ていうかむしろ忘れててくれてよかった。
だからもうその話題は出さないで欲しい。
「えっと……、春也は一回家帰るよね?」
「うん」
話題を変えたくて何となくそう確認してみた。
ちなみに彼らがあたしの家にいたのは、気絶したあたしを家に送り届けてそのまま寝てしまった……という経緯かららしい。
彼は昨日の服装のままだったから、これから一度家に帰る予定。
そこであたしはふと思いついた。
「そういえば、春也の家ってどこ?」
「俺の?うーん…」
彼は眉をひそめた。
あ、そっか説明苦手なんだよね。
「今度、来る?」
「へっ?」
突然の言動に、あたしは目を丸くする。
神代君の家に、あたしが?
いやいや、もう既に彼があたしの家に来たっていう事実はあるけど、あたしはひとり暮らしで。
彼はきっと実家だろうから、家族がいるはず……。
「いいの?」
「うん。今度ね」
彼は緩く笑って頷いた。
なんか、嬉しいんだけど緊張するな……。
神代君のお父さんとお母さん、どんな人なんだろう。
お兄さん……は行方不明だから、いないか。