だから、君が嫌いだ【短編】
告白したあの日の私は、たぶん人生の中で一番頭がおかしかったんだと思う。


あ、湊時雨が好きだ。と脳が突然騒ぎ出して、気づけば走り出して、そして気づけば時雨を捕まえて一息で告白していた。


『特別なキッカケがあったわけでも、関わりがあったわけでもなかったのに気づいたら脳が湊時雨の事を好きだと叫んでいたのだから、もうこれは本能的な恋なのでしょうがないと思うんですがとりあえず私松下あやっていう名前ですが好きです付き合ってください!』


一言一句、違わず覚えている。


今となっても、意味が全くわからないし、なぜ突然自己紹介したんだよって話だし、日本語おかしいしよく息持ったなって感じだし。


ただ、その日私よりもぶっ飛んでいたのが湊時雨だった。


「ん、よろしく」


それだけ言うと、さっさと帰宅してしまった。


そうしてその日から、よくわからない彼氏彼女の関係が始まったのだ。


と言っても、一緒に登下校するわけでもなく、お昼を一緒に食べるわけでもなく。


放課後になると私が勝手に時雨の家に転がりこんで、夕食時までぼーっとするだけ。
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