私が行かないでって言ったら、君はここにいてくれますか?
恋愛で、これ以上辛いことはないと思う。



俺は何でもないふりをして志帆に声をかける。



大樹君と恋ちゃんを置いて、スイーツを食べながら志帆といろんな話をした。



せめて俺といる時だけは悲しい顔をして欲しくない、そう思って。



それなのに、追い討ちをかけるように最悪な光景が目に入る。




俺達の前で抱き合っている大樹君と恋ちゃん。




直感でこれはやばいと思った。




声を掛けようと隣を向いた。




案の定志帆は今来た道を猛ダッシュで走っていく。



俺は慌ててその後を追いかける。



結構走ると、地べたに座り込んでいる志帆を見つけた。



転んだのか膝から血が出ていて、慌てて手当した。



そして・・・・・・・志帆が大樹君への思いを話してくれた。



分かっていたことだけど、やっぱり好きな人から好きな人の話をされるのはキツい。



志帆は毎回この苦しさを味わっているのか。



それを思うと、今すぐ抱きしめてあげたくなった。



抱きしめたい気持ちを抑えて、志帆の涙を拭く。



でも、そうしながらふと思ったんだ。




少し冷静になって、思った。




俺達お揃いだよ。



好きな人に好きな人がいる、最悪なお揃い。




でも、そんなお揃いなんていらないよ。



普通のカップルみたいなお揃いがほしいよ。



なんてそんなことは言えない。




俺の中にもどかしさだけが残る。




< 54 / 176 >

この作品をシェア

pagetop