私が行かないでって言ったら、君はここにいてくれますか?
分かってたはずなのに。




私は道の端にしゃがみこむ。




涙なんて、出ない。




でも、足からは血が出ていた。




「あーあ。またやっちゃった。」




独り言をしていると、後ろから下駄のカランカランという音が近づいてくる。




「志帆!!」




あー、やっぱり弘人だ。




何度もこうやって追いかけてくれる。



私が何回も逃げ出すから。




弱いなー、私は。




「志帆っ!!・・・・・汚れるよ。そんな所に座って。」




「うん。いいよ。汚れても。」




「・・・・・・・はぁー。俺がやだな。志帆せっかく浴衣着たのに、汚れるのは。」



弘人の優しい言葉に胸がキュッと痛む。



「ねぇ、・・・・・こっちに座ろ。」



私の前にしゃがみこんで、弘人が手を差し出す。



私はその手を握って立ち上がった。



そして土手の草の上にタオルを引いてそこに座るように言った。



私はそこに座って下駄を脱ぐ。



「あーあ。皮むけてるし。痛くない?」



「うん。・・・・・・・・もう、痛くないよ。」



「そんなの嘘でしょ?・・・・・・志帆、俺が聞いてるから、思ってること全部、言ってよ。」


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