私が行かないでって言ったら、君はここにいてくれますか?
それなら、私は弘人の気持ちに気付かずに大樹のことをずっと話してしまっていた。



弘人は、どんな気持ちで聞いてたの?




私と同じじゃん。




「返事は、落ち着いてから言ってほしい。志帆を困らせたい訳じゃない。」




寂しそうで、消え入りそうな声。



「うん。分かってる。・・・・・・・・でも、今は1人にさせて。ごめん。・・・・・今日は、ありがとう・・・・」




それだけ言って私はその場を後にする。




足元がおぼつかないけど、ただ帰り道を1人歩く。




頭の中は大樹と恋の姿と、さっき言われた弘人の顔と言葉がずっと繰り返し思い出される。




大樹と、恋は付き合って。




弘人が私に告白して。




私は大樹に失恋して。




これが今のところの事実。




でも、これ以上何が何だか分からない。




私は家に入ると、そのまま部屋に入った。




「志帆?帰ってきたなら挨拶しなさい。」




「・・・・ごめんお母さん。りんご飴、後でリビングのテーブルに置いておくね。」




「うん。ありがとう!お風呂入っちゃいなさいね。」



「・・・・・・・・うん。ありがとう。」


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