紳士的?その言葉、似合いません!



しばらく見つめあってその空気に耐えられなくなる前に都築さんは口を開いた。



「長谷川さんは優秀な人だと私は思っています」


「……はい?」



思わず声がひっくり返ってしまった。いやだってそんなこと言われると思わないでしょ。状況的にも。


都築さんのように本当に優秀な人にそう言われて嬉しいわけではないけど今は困惑の方が強い。喜びは酔いが冷めて冷静になってから味わおう。


なんと返せばいいのかわからず口を閉ざしていると都築さんはクスクスと楽しげな笑みをこぼす。そんな姿もまるで一枚の絵のように洗練されて美しい。



「私は仕事ではあまり長谷川さんとは関わったことはないですが貴女の上司から話はよく聞きますし、言付けはしっかりとこちらがわかるように筋道立てて話してくれる。付き合いの長さもあるのでしょうが、上司が何を求めているのか先読みしてそれを用意できる。それができる貴女は優秀な人ですよ」


「は、ぁ…ありがとうございます」



それ以外なんと言えというのだろうかこの人は。それとも「そんなことないですよぉ」と今どきの子を見習って謙遜する方がよかっただろうか。


でもそれってはっきり言って仕事をするにおいては当たり前だと思う。できない人だっているけどわたしはできないからとそれに胡座をかいて終わるのは嫌だ。


だからできるように努力した。わたしのプライドは結構高いのだ。




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