紳士的?その言葉、似合いません!
思わず胡乱な目を向けてしまうけどこればっかりは誰がなんと言おうとわたしは責められる言われはない。だって個人情報がわたしの知らないところで流出していたんだ。怖いじゃないか。
この人見た目に反して危ない人なんじゃと警戒して少しでも距離を稼ごうと腰を浮かせるけどここは一番端で隣は壁だった。そしてその反対には都築さん。
残念ながらわたしに退路はないらしい。怒りで頭がいつもより働いていなかったようだ。なぜこの席に座ったわたし。割と切実に数十分前に戻りたい。
「そうですねぇ、確かに長谷川さんに直接聞いたことはないですけどその存在を知っている人は結構いましたからその人たちから少しお話を聞かせてもらいました。他にも知ろうと思えばいろいろ手段はありますし」
さらりと答えてくれていますが逆に怖いです。そりゃあ隠してたわけではないしわたしが付き合っていたことと付随して元彼の存在も知っている人は知っているだろうけどそれをわざわざ聞いたのか?
それに最後にくっつけた言葉が怖い。「知ろうと思えばいろいろ手段はある」って意味深なんですけど何したんですか怖いです。
意図せずに知ってしまった都築さんの、こう、危ない部分よ。今夜の出来事全部これに塗り替えられるんじゃないかってぐらい強烈だった。元彼なんて足元にも及ばないわ。
できることなら明日には忘れていたいけど無理だろうな。記憶力には自信があるし酔わないことにも自信がある。今はそんなのいらなかったけど。