紳士的?その言葉、似合いません!



リビングにでんと鎮座したシンプルなソファーに座らせてもらい素早くクッションを盾にする。変態とは近づかないに限る。


毛を逆立てる猫の如く警戒するわたしに対してなんとリラックスしている家人よ。わたしだけ意識しているみたいでくそ腹立つ。



「とりあえずお昼ごはんでも食べましょうか。何かリクエストがあれば応えますが」



何かありますか?と小首を傾げる都築さんにわたしはむっすりとそっぽを向いた。答える義理はないもんね!


そんな反抗ですら楽しいのか都築さんはクスクスと笑っていた。…昨日からこの人が何を考えているのかまったくわからないんだけど。


怖いもの見たさで多少知りたい気も…あ、やっぱりやめよう。変態の考えを知るとか下手したら日常に戻れない。君子危うきに近寄らずだ。



「では、ちょうど唐辛子があるので激辛の麻婆豆腐でも作りましょうか」



ニッコリと麗しい笑みを浮かべるその顔が今は悪魔に見えた。わたし辛いもの食べれないんですけど?!食べれて柿ぴーなんですが!


そんな心の叫びを胸に押し込めつつまさかそんな弱みを見せるのも悔しくて苦し紛れにキッと睨み付けた。



「ふふふ、冗談ですよ。貴女、辛いものは食べられないでしょう?」



……なぜそれを知っている。職場の人だって仲のいい人しか知らないのに!!



「好きな女性のことですからねぇ。情報収集は抜かりありませんよ」



そこは抜かりあってほしかったよ!昨日から怖いわ!!





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