紳士的?その言葉、似合いません!
食後のコーヒーまで用意してくれた都築さんに渋々お礼を言い、後片付けをしている姿をチラリと見る。
今さらながらに不思議に思う。なんでこの人はわたしなんかに関わっているんだろうか。
いやまぁさらりと惚れた女とか言われてるから都築さんはわたしのことを好き…で、だからだとは思うけど。
不本意ながら昨夜のことが頭の中に浮かんできて思わず顔が熱くなる。そういうことをしたことで恥ずかしいっていうのもあるけど、それとは別に、こう、なんというか。
今までも誰かと肌を重ねたことはある。でも昨日は今までの誰よりも触れた指先とか吐息とか、唇の感触とか…全部が優しくて、柔らかくて。まるで自分が美術品にでもなったような気がした。
そんな風に触れられたことなんかなかった。甘く見つめられたことなんかなかった。あんな風に…泣けたことなんてなかった。
あたたかな腕に抱かれながら酷いやらつらいやら悔しいやら、元彼に言ったのかそれとも都築さんに言ったのかわからないことをいろいろ言った。
いろいろ言いながら自分でも理解できないぐらいボロボロ泣いてたと思う。大人になってからこんなに泣いたことないんじゃないかってぐらいだった。
しゃくりあげながら泣くわたしを都築さんは微笑んだまま涙を拭ってキスをして、抱きしめてくれた。
だからだろうか、元彼のことを今はどうでもいいと思う。それよりも都築さんのことが気になってしまうのは。