紳士的?その言葉、似合いません!
しかもここは会社のロビーである。人の目がないところでも怒っただろうが一番人の注目を集めるであろうロビーでこの仕打ちとか怒るどころの話じゃない。
恐らくわたしの背後には暗黒オーラが漂っていることだろう。その証拠に先ほど挨拶したときにいた隣にいた人はすでに退散している。
「それで都築さん。こんなところで、こんなことをした意図を聞いてもよろしいかしら?」
さりげなく…でもないけど無理矢理手を取り返してニッコリと笑みを浮かべるわたし。うん、声を上げなかったわたしの忍耐力すごい。てか自画自賛でもしてないとやってられないわ。
「おや?ふふ、つれない人ですねぇ。私はただ愛おしい人に会えた喜びを素直に表しただけですよ」
いつもと変わらない声量にも関わらずロビー全体に聞こえたのではないかと思うぐらい通った都築さんの声に一気に周りが騒がしくなった。
マイクでも使ったんですかこの野郎。というか何騒ぎを更に大きくしてくれちゃってるんですかあぁん?ふざけないでいただけます?
という心の叫びを込めた渾身の睨みを都築さんにお見舞いしてみるものの返ってきたのはこれ以上ないぐらいの美麗な笑み。
うん、自信を持って言おうじゃないか。こいつ確信犯だと。
目が死んでいるのが自分でもわかる。そんな虚ろな目で見るがやはり元凶はこの状況を楽しそうに見て笑っているだけだった。