紳士的?その言葉、似合いません!
要は信じられないのだ。都築さんの気持ちも、好かれる自分のことも。自分に自信がないから尚更。
「何故、は何故です…」
再び動き出した車にポツリと自分の声が落ちる。その声が自分でも驚くほど泣きそうに聞こえてこれ以上の言葉を紡ぐのを躊躇わせた。
お互い口を閉じたまま静かな空気が間に流れる。流れる景色を見ていると車が止まり、ここが目的地だろうかと自然と確認するように隣へ顔を向けると見計らったようなタイミングで引き寄せられて唇を塞がれた。
目を閉じることも忘れていると淡く照らされた美麗な顔とあの日の夜にも見た熱を灯したオッドアイに体が痺れるような気がした。
このままだとどうにかなってしまいそうな自分がいることを否定できなくて、それが怖くて思い出したように抵抗するが、力強く後頭部を押さえられ優しく頰を撫でられて。
嫌だと心底思うのにあの日の夜にも触れたぬくもりを否が応でも感じてしまって、その優しさに縋り付いてしまいそうになる。
「、ふっ、あ…、」
「ふふっ、可愛らしいですねぇ」
生理的に浮かんだ涙をちゅ、と唇で掬い取りくたりと力が抜けた体を抱きしめて頰を撫でる。動作から、眼差しから感じ取れる愛おしげな視線がいたたまれない。