紳士的?その言葉、似合いません!



「不安ですか?貴女を好きだという私が、好かれる自分が信じられませんか?」


「…っ、」


「ふふ、今はそれでもいいでしょう。ずっと待っていましたからねぇ、あと少し待つぐらいは我慢できますよ」



何より、今は貴女に触れられる権利もあるわけですし、と都築さんはこぼすがそんな権利は渡していない。断じて渡していない。


むっ、としてそう言いたくなったがわたしを見つめる瞳が甘く柔らかく、優しくて、そんな言葉はどこかに飛んでいってしまった。



「まぁ貴女の気持ちが私に追いつくまでは我慢しますが、私もそこまで甘くないのでまずは外堀から埋めさせて頂きます」


「……何それ怖いです。というかわたしの質問には答えてくれないのかしら?」


「そうですねぇ、貴女が私に堕ちてきてくれたら喜んで教えましょう」


「じゃあ一生知らないままね」


「ふふ、言いますねぇ。ですが貴女がそれを知る頃には私から逃げられなくなっていることは確実ですのでご了承ください」



未だ抜け出せない腕の中から都築さんを見上げればふわりと美麗な笑みが落ちてくる。その姿は紳士的だけどその実言っていることはハッキリ言ってストーカーである。


やっぱりこの人、紳士的な皮を被ったただの変態だ。しかも人が傷ついて弱ってるところに漬け込んでくるようないやらしい策士でもあることも否定できない。


でも、そんな変態だけど…誠に遺憾ではあるし腹立たしくもあるし悔しくもあるし心底認めたくないけど。


確実に、ひび割れた心の隙間にぐいぐいと無理矢理入り込んでいるというか…



(時間の問題かな…)



絶対に言わないけど、死んでも心の中に留めておくけど。この時点できっとわたしはそのうちこの人に絆されてしまうのだろうと思った。




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