紳士的?その言葉、似合いません!



言葉にしたくてもできない感情に堪らずにそのまま伝票を押し付けて店を出た。支払いも年上だからっていつもわたしだったんだ。最後ぐらい払っとけ馬鹿野郎。


さっきまで食べていた美味しいごはんの味なんてどこかにいってしまった。ごはんに罪はないのに申し訳ない。でも今日ばかりは許してほしい。


もやもやと消化できない思いを抱えたまま帰路を歩いていたものの、このままじゃ多分仕事に差し支えるほどに引きずってしまうだろうと進行方向を変える。


大人だからこそできる必殺、アルコールで全てを吹っ切る作戦。大抵のことはお酒飲んで吐き出してアルコールを摂取して忘れられるはずだ。幸い明日は日曜で仕事はない。盛大に2日酔いになってしまおう。


1人でよく行くバーに立ち寄ってじゃんじゃんお酒を注文する。がぶ飲みしてるわけじゃないからね、ちゃんと味も楽しみつつだよ。じゃないと作ってくれた人に失礼だし。


わたしは結構お酒に強い方だ。飲み会接待で酔ったことなんてほとんどない。ほろ酔いはあっても記憶を飛ばしたりするまで飲んだことももちろんない。


なので遠慮なく飲みたいものを飲みたいだけ頼んで飲んでいたら不意に隣に誰か座った気配。誰だと思って顔を向ければそこには夕方別れたはずの都築さんがニッコリと笑顔を浮かべていた。




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