紳士的?その言葉、似合いません!
できればしばらく顔合わせるのは遠慮したいけど無理だろうなぁ、と考えていると見計らったかのようなタイミングで都築さんから電話がきた。
もはや狙ったんじゃないかと思えるぐらいのそれに顔が引きつる。はっきり言ってこれもうホラーと言っていいと思うよ、うん。
わたしの顔で相手が誰なのかわかったのか先輩はニヤニヤしながらしれっと「出れば?」とのたまった。絶対に面白がってますよね?出ますけど。出なかったとバレたら後が怖いですから。
「…はい」
「あぁ、凛華さん。私ですが今、というかこれからお暇ですか?」
機械を通して届くこの甘い声にももう慣れた。慣れたくてそうなったわけではないけども。最初の頃は慣れずにドギマギしていたけど今は流石にない。
そしてこの疑問形でありながらさりげなく断定のように聞いてくるこれも慣れた。もう一度念押しして言うけど慣れたかったわけではない。必要に駆られただけである。
こういうときに人間は順応する生き物だなぁとしみじみ思う。ちなみにこの場合は「暇ですか?(暇ですよね?)」の副音声が入っています。
が、先ほども言った通り人間慣れる生き物で今ではそれなりに断れる。あくまでそれなりで聡い都築さんには嘘ついたらすぐにバレるんだけど…何故なのか未だに謎だ。