紳士的?その言葉、似合いません!
項垂れるわたしに先輩は苦笑交じりにお酒と出された料理を摘んでいた。
うー、先輩のせいじゃないけどそういう余裕のあるところを見せられると、こう、なんか釈然としない。あ、そういえば、
「先輩は最終的には社長に捕まったんですよね」
「そうね。現在進行形で捕まってるわ」
「なんで諦めたんですか?」
さっき聞いた通りに死にそうになったからとかこれ以上の面倒がいやとかそういう感じではなかった。先輩ならそういう理由でってのもありそうなのに。
視線を上げると先輩は一瞬だけ苦いものを食べたように顔を顰めて嫌そうだったけどじっと見つめていたらわたしが引かないことを悟ったのか肩をすくめる。
「なんだかんだ言っても社長のことは嫌いじゃなかったし、あれだけ私を求めてくれる人はこれから先いないだろうなって思っただけ。端的に言えば絆されちゃったのね」
「絆されたって…」
「あんたも似たようなもんでしょ」
クスクスと笑う先輩に今度はわたしの方が顔をを顰めてしまった。それはまぁ、ある意味で心理というか当たりというか…でもそれを認めるのへなんとなく癪に触る。
都築さんのことが嫌いなわけではないしむしろ…だけど。さっき先輩の言っていた通り身分差ってやつだ。わたしと都築さんの間に明確な身分差はないけどわたしじゃ都築さんに釣り合わない。それぐらいは自覚している。