紳士的?その言葉、似合いません!
自分でも驚くぐらい目の前のこいつに対してなんの感情も浮かんでこない。懐かしいな、とか別れたときの腹立たしさとか。
わたしの中でのこいつは完全に過去のものであってなんの関心もくそもないのだと理解する。
「んー、久しぶりに会ったね。綺麗になった?」
「だとしたらあんたと別れたからでしょうね」
はっ、と鼻で笑うと気分でも害したのか少し眉をひそめる様子にいい気味だと思う。まぁあながち間違いでもないような気がするけどね。
というかなんでこいつここにいるんだ。わたしが知っているこいつの家って確かここから4か5ぐらい先の駅だったはずだけど。越してきたんだろうか。
だったらあの妊娠させた女の子もいるんだろう。それはさすがに気まずすぎる。いっそのことわたしも引っ越してしまおうか。
「なんか冷たくない?せっかく会えたのに」
「わたしを捨てた元彼に優しくする道理がないだけよ。それより奥さんのところにいなくていいの?」
恐らくもうお腹だって大きくなっているはず。そんな身重の女性がいたら、それも自分の奥さんなら心配にもなるだろう。
面倒だからさっさと帰りなさいよ、と言外に込めたが鈍い目の前の男には通じないみたいで「嫉妬してるの?」とほざきやがった。思考能力をどこかに落としてきたのか。