紳士的?その言葉、似合いません!
あまりにも意味が不明で呆れていると何をどう思ったのかわたしが了解したと受け取った目の前のやつはさっさとわたしの手を取ってそのまま歩き出そうとする。
というかこの方向完全にわたしの家行こうとしてるわよね?これ本格的に引っ越してを考えた方がいいかもしれないわ。って今はそれどころじゃなくて。
「ちょっと、離してよ!」
手を振りほどこうとするものの男の力には敵わなくて踏ん張った足も役に立たない。
それに転んだりしてお腹の子に何かあったらと思うと激しい動きをするのも躊躇われて結果抵抗とも言えないような弱々しい動きになってしまう。
普段だったらダッシュなり蹴るなりするのに…ほんとタイミングが悪いというかこいつが考えなしというか脳タリンというか!
ふつふつとお腹の底から怒りが湧いてくる。そうだよ、そもそもなんでここにこいつがいるわけ?なんでわたしが巻き込まれなきゃいけないのよ?!
全く、これっぽっちも、関係のない赤の他人であるわたしが!!
今が夜中だとか家の近くだとかは頭から吹っ飛んでいて感情のままにふざけるなと叫ぼうと口を開いたと同時にぐいっと背中から抱きしめられた。
何が起こったのか理解する前にさっきまでうんともすんとも言わなかった手が外れる。それにちょっとホッとすると同時に。
「いけない人ですねぇ。私という者がありながら浮気ですか?凛華さん?」
いろんな意味で終わったと意識が遠のきかけた。