紳士的?その言葉、似合いません!



仕事上関わっていると自然と目に入るが、都築さんはいつも柔らかな笑顔を絶やさず性格も穏やかで仕事もできるので初めて会ったときに「何このハイスペック!」と内心叫んでしまったが恐らくそれはわたしだけじゃないだろう。


そんな都築さんが、なぜここにいるのか。


いや、普通によく来るって言ってたし本当にたまたまなんだろうけどじゃあなぜ隣に座る。あれか、知り合いだから空気を読んで一緒に、とか?そんな空気は読まなくて結構である。むしろ今日は読まないでいただきたい。



「あの、今日はお1人で?」


「そうですねぇ」



それじゃあそのままお1人で飲んではいかがでしょうかと言う前に「そういう長谷川(はせがわ)さんは今日は彼氏と夕食ではなかったんですか?」とボディーブローを受けた。


お酒を吹き出さなかったのは奇跡と言っても過言ではない。というかなんでそんなこと知ってるんだ。都築さんに話した記憶ないんですけど。


思わず訝しげな目を向けたらニッコリと笑顔を向けられた。



「女性は興奮すると声が大きくなりますからね。秘密の話をしたいときは化粧室でも少し声を落とした方がいいですよ」



……つまり犯人はわたしと今日のことを話していた直属の上司らしい。確かにあの人の声は大きかった。だからと言って婦女子の話を聞くのはいかがなものか。


そうは思っても物理的に秘書室に行くときにお化粧室通るから言っても仕方ないんですけどね。




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