紳士的?その言葉、似合いません!
「は…?あんた誰だよ?」
「それはこっちの台詞ですけどねぇ」
クスクスと笑う都築さんに元彼は憮然とした顔をしてる。元彼に未練はない。さらさらない。これっぽっちもない。でも今すぐ逃げてと言いなくなった。
後ろにいる都築さんの顔が見れない。だって雰囲気だけで怖い!なんかヤバそうな黒いのがどんどん増してきてる!元彼鈍いにも程がある。気づけよ!?
「見てわかりませんか?凛華さんはすでに私のものになっているのですよ」
見せつけるかのようにいきなり頰に口づけられたために「ひゃ、」と無防備な声が出て羞恥から紅潮する。わざとらしいリップ音がさらに恥ずかしい。
「元彼ごときが関わるのはもうやめてくれません?…目障りで握り潰したくなる」
最後の言葉にゾッとした。言葉にって意味もあるけど聞いたこともないような低いトーンに。本当にしてしまいほうな本気の響きがそこには含まれていた。
鈍い元彼と言えどもその声には本気を感じられたらしくちょっとビビったように後ずさりした。頼む、そのままターンバック、ついでにダッシュしてくれ。
そんなわたしの心からの頼みは届かなかったらしい。元彼はどれだけ馬鹿だったんだと改めて過去の自分の男を見る目に絶望した。