紳士的?その言葉、似合いません!
鏡はないけどわかる。わたしの顔色は恐らく、いや絶対にざあっと血の気が引いただろう。リトマス紙か。
墓穴を掘ってしまいそうでまた新たな冷や汗にドキドキしながらも都築さんはどこかキョトンとした顔でわたしを見つめてくる。どうやら苛立ちは消えたらしい。よくはないけどよかった。
手の拘束が緩んだのでそろそろと静かに外す。目をそらしたい。が、そらした瞬間に食いつかれそうな予感がしてそらすことができずしばらくはお互いの呼吸音だけが部屋に落ちた。
不意にぽすん、と都築さんが上に覆いかぶさってきて悲鳴をあげそうになったがなんとか堪える。お腹に圧迫感がないのはたまたまなのか気にしてくれたのか。
「ふふ、ふ…くっ」
「あ、の…都築さん?」
いきなり耳元で笑われたら怖いんですけど。かなりのホラーなんですけど。
未だドキドキばくばくと騒がしい心臓の音に都築さんのかすかな笑い声が響く。というかあまりにも笑うものだからちょっと心配になってきた。
「あの…?」
「凛華さん。私との赤ちゃん、ここにいるんですね?」
疑問形ではあるもののすでに断定しているような口調で都築さんはわたしのお腹を撫でる。
わたしを見つめるその表情はいたずらが成功して喜んでいるような子どものそれと同じで不覚にもちょっと目を見張ってしまったのは珍しかったからだと思いたい。