紳士的?その言葉、似合いません!
両手で頰を包まれてそっと唇が落ちてくる。何度も受け止めたそれは泣きたくなるぐらいに優しくて。
わたしを見つめる瞳も甘くて見ないでほしいと思うのにもっと見ていてほしいとも思う。
「まるで幼い子どものような貴女が愛おしいですよ」
いつもと同じ言葉が、どうして今になってこんなに心を震わせるんだろう。いや、わたしは答えはすでに知っている。でもやっぱりそれを認めるのはなんだか悔しくて。
「……わたし、子どもじゃないわ」
「えぇ、知っていますよ。それこそ貴女自身が知らない体の隅々までしっかりと」
「変態」
「ふふ、褒め言葉ですねぇ」
クスクスと笑いながら抱きしめてくる温もりにちょっとだけ、ほんのちょっとだけ自分から擦り寄る。
何度も与えられた温もりに安堵するわたしはすでにこの人に絆されてしまっているんだろう。悔しいけど。
「あぁ、そうでした。凛華さん、これをどうぞ」
一瞬離れた温かさに寂しくなる自分に脳内で張り手を食らわせつつ鞄の中から出された書類?のようなものに首を傾げながら受け取って思わず固まった。
「……なんですか、これ」
「見ての通りの婚姻届ですねぇ」
それはわかる。初めて見たけどそれはわかる。わたしが言いたいのはそうじゃなくて。