紳士的?その言葉、似合いません!
訝しく思っているとすぐに話は終わったようで軽く会釈をして彼女は秘書課の方に入っていった。
「斉木さん、今の彼女は?」
「え?…あぁ、そういえばあの子がこっちに移動したときあんたたちは短期の出張だったわね。ほら、1人秘書課辞めた子いるでしょ?その代わりに配属された子よ」
「あぁ、あのときのですか」
少し前に秘書課の1人が私と社長に媚を売るようになった。多少のことなら目を瞑ったが仕事に支障が出るようになって仕方なくと言いつつその実、問答無用に手を打った。
こういう手合いは鷹斗に任せると手加減なしですからねぇ、私が穏便に話し合いで済ませました。精神的ダメージは計り知れないですが、まぁ直接暴力を振るったわけでもありませんし大丈夫でしょう。
さっきの彼女の態度を思い出せば今回はそのような煩わしいことが起こらなさそうなのでよかった。それだけでだいぶ好感度が上がる。
斉木さんに聞いても私や社長に興味のない真面目な人だということで安心した。斉木さんが言うのなら大丈夫なのだろう。
「あぁ、それにあの子彼氏いた気がするわ」
「それはそれは…」
彼氏がいても私たちに媚びを売る女性は後を絶たないのですが。でもさっきの様子からして本当に私には興味がなさそうだった。斉木さんと同じ、奇特な人だ。
このときはまだ、そのことに対してそれなりに他人に対する好感だけを持っていただけだった。