向日葵にさよなら。
階段を下って店に顔を出すと、そこにはなぜかまた彼女の姿があった。
どうしてここに倉本がいるのだろう? 一日に二回も花を買いに来る客なんてそうそういないし、失礼なことを聞いたばかりだっていうのに。
まさか、僕に苦情を言いにきたとか? でも、ぱっと見そんなに機嫌悪そうじゃないけど。
「工、なにぼーっと突っ立っているの? 倉本さん、工にアイスの差し入れ持ってきてくれたんだよ」
「倉本が、僕に、アイスの差し入れ……?」
そう口に出してみたものの、どこか現実味を帯びていなかった。
倉本のほうを見ると、確かに手にスーパーの袋をぶら下げている。
「うん。よかったら近くの公園で一緒に食べたいなって思って」
「倉本が、僕と、一緒にアイスを食べる……?」
「松波くんが忙しくなかったら。早くしないと溶けちゃうし、行くなら早く行こう?」
「わ、わかった……母さん、ちょっと行ってくる」