向日葵にさよなら。
 
 倉本はチョコとバニラのミックスソフトクリームを持っていた。丁寧にプラスチックのふたをはずし、角の部分をペロリと舐めた。

 その仕草はどこかあどけなく、でも少しだけ色っぽく見えた。
 オレンジ色の空が彼女を照らして、いつもよりも綺麗で、なぜか儚げだった。


「シャーベット、おいしい?」

「うん。……どうもありがとう」

 もっと味の感想なんかも伝えられたらいいのに、緊張してお礼を言うのが精いっぱいだった。
 どうして僕はいまここにいるのだろう。どうしてCランクの僕が、Aランクの彼女のとなりで、彼女が買ってくれたアイスを食べているのだろう。


 倉本の意図が分からない。何か話したいことがあるのか、それともどうしても急にアイスが食べたくなったのか。聞いてみたいのに、勇気がなくて木製のスプーンでシャーベットをほぐすことしか出来ずにいる。

 当然二人の間には沈黙が走っていて、それはまるで鉄の塊が両肩に置かれているかの如くに重いものだった。


 
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