向日葵にさよなら。
「……病院に入院しているのは、お母さんなの」
その沈黙を破ったのは、倉本のほうだった。それでも僕はなんて答えたらいいかわからず、ただただ彼女の次の言葉を待つ。
「うちの家ね、母子家庭なんだ。お父さんとお母さんは私が幼稚園の時に離婚した。それからお母さんは、昼も夜も私のために働いてくれた。私には見せなかったけど、すごく無理していたみたいで……過労で倒れたの」
「じゃあ、病気で入院しているわけじゃないんだ」
「うん、でも夏風邪もこじらせちゃっていて、入院が長引いちゃって。重い病気ではないのだけれど、毎日不安なんだ。もしお母さんが死んじゃったら、って思うと……」
「そんな! きっと、すぐに退院できるよ」
病状とか何も知らないくせに、どうして無責任なことを口にしてしまったのだろう。
でも、少しでも前向きに考えてほしくて、言わずにはいられなかった。