向日葵にさよなら。

「ありがとう。ただの過労だもん、きっと大丈夫よね」

 そして、彼女の話を聞いて僕は、改めてあの時の質問が失言だったということに気づく。


「あの、今朝の質問のこと……ごめん。倉本の気持ちも考えないで、変なこと聞いちゃって」

「ううん、いいの。むしろ、あの時ああ聞かれてはっとしたんだ。こんな時でも笑顔を作っているなんておかしいって」

「笑顔を作っている?」

「そう。私ね、こういう家庭環境だからお母さんに心配かけたくなくて、いつも笑顔でいることにしたの。友達に意地悪されたり、部活の試合に負けて悔しかったりしても、いつも笑っていた。ずっとそうやって過ごしていくうちに、笑顔でいるのが当たり前になっていったの」


 彼女はいつの間にかソフトクリームを食べ終わっていて、コーンだけを手に持っていた。

 僕はシャーベットを食べるのも忘れて、こんな話をしても笑っている倉本の横顔に目を奪われていた。
 オレンジ色の空は深い闇の色に着替え始め、彼女を照らしていた光は消えていく。


 
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