向日葵にさよなら。

 アイスを一緒に食べた日以降、倉本が店に顔を出すことはなかった。
 うちに来るということはそれだけ入院が伸びているということだから、来ないに越したことはない。

 それなのに僕は、また倉本が来たらどんな話をしようかということばかり考えていた。
 花に詳しいのは素敵なことだって誉められたから、花言葉についていろいろ教えてあげようかな、とか。なんでもない学校の話題を出してみよう、とか。

 まるで恋をしたかのように浮かれていたのかもしれない。
 刻一刻と夏休みが終わりに近づくにつれ、倉本と話した時間は本当に現実だったのかとすら感じるようになっていた。


「よくうちに来ていた鈴木さんとこのおばあちゃん、亡くなったらしいよ」

「そっか、だから最近みなかったんだ……」

 夏休みも残り一週間に差し迫ったころ、母さんがふとそんな話をしてきた。


 
< 25 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop